レビューブログ【レブログ!】

映画、アニメ、ドラマ、マンガ、書籍、英語読書の感想(ネタバレなし)が6000件以上!


雨の日も神様と相撲を<全3巻>

幼い頃から相撲の英才教育を受けながらも
体格や腕力に恵まれなかった中学生が
カエルを神様と崇める村に引っ越す話。


相撲に詳しくない人でも
その奥深さがわかる主人公の解説に感心するし、
それでいてカエルを神扱いして
挨拶したり会話するような特殊な世界観、
さらに殺人事件まで絡んでくるというバラバラの要素が
絶妙に融合されていて違和感なく楽しめるのが素晴らしい。


それぞれ単独でも作品になりそうな個性的な内容なのに
ジワジワと絡んできて結末に向かっていき、
たった3巻でうまく完結するという構成が見事。


嫌なキャラクターが出てこないのに緊迫感にあふれ、
好奇心を次々と刺激される斬新な展開と
いろいろな伏線を綺麗に回収する素晴らしい傑作だった。

デザイナー渋井直人の休日<1巻>

デザイナーとして働く中年男性が
物事が思い通りに行かずにジタバタする話。


自己顕示欲やプライドは高いのに
スマートな振る舞いができない痛々しさを味わう作品で、
周囲から尊敬されたい思いが空回りする様子が
見ていてひたすら小っ恥ずかしく、
自分の未熟な頃を思い出してしまうところが醍醐味。


虚勢を張りたい中学生が
そのまま歳をとったような主人公で、
こういう中年にならないよう反面教師として楽しめる。

嫁いできた嫁が愛想笑いばかりしてる<1巻>

愛想笑いばかりしている妻に不安を感じる武士と
そんな夫が大好きな妻の話。


相思相愛なのに本音を言い出せない夫婦というだけなのだが、
お互いに気を遣う様子や悪い方に誤解する様子が
微笑ましくてほのぼのと読むことができる。


基本的に似たようなパターンの繰り返しだが、
ひとつのエピソードがわずか数ページなので
サクサクと楽しめて幸せな読後感が味わえる。

世界の夜は僕のもの

1990年代前半のサブカルチャーを題材にした短編集。


1970年半ばに生まれた若者を主人公にしており、
当時の音楽やファッション、雑誌にマンガ、お笑いなどに
のめり込む様子をうまく描いている。


作者のエッセイなのかと思うほどリアリティがある描写ばかりで
当時のサブカルに触れていた人なら懐かしさを味わうことができるし、
若者特有の青臭さに昔を思い出すこともできる。
ただ、そういった文化を知らない世代には共感できる部分が少なく、
知らない人の昔話を聞かされているような疎外感を感じるだろう。


数話ずつで構成されるエピソードは
絶妙の哀愁を感じる場面が用意されているものの、
最後の結末が妙にあっさりしているのは残念。


1990年に大学生ぐらいだった人向けの作品。

青野くんに触りたいから死にたい<1~9巻>

付き合い始めたばかりの彼氏が
幽霊となって現れた女子高生の話。


実体のない幽霊になってしまった彼氏との
微笑ましいやり取りを描くシュールなラブコメかと思いきや、
少しずつ不穏な様子が伝わってきて
いつの間にかホラーの要素が色濃くなっていく。


彼氏の姿や言葉は主人公しか感じ取れないことと
他人の身体に取り憑くことができることで
どんどん異常な事態に巻き込まれていき、
彼氏を大切に考えるほど主人公が孤立していくのが怖い。


登場人物の使い方が非常にうまくて
どういう展開を見せるのか予想がつかず、
落ち着かない気持ちのまま
ページをめくる手が止まらなくなる。


初々しい恋愛とホラーを絶妙に融合した怪作。

紛争でしたら八田まで<1~3巻>

地政学リスクコンサルタントとして
各地域のトラブルを解決していく女性の話。


いろいろな地域で起こる実際の紛争を背景にしているため
読むだけでなんとなく国際情勢に詳しくなるのはいいが、
巧みな交渉術で解決するのかと思いきや
肝心なところはプロレス技で強行突破する点が残念。


また、意味のわからないカタカナを
ふりがなで読み替えさせるセリフが多く、
小さくて見にくい文字をいちいち読まされるのも面倒。
コマ割りや構図などマンガとしての完成度もイマイチ。


作品内に世界情勢が反映されているのは新鮮だが、
MASTERキートン」のような説得力は感じられなかった。

水は海に向かって流れる<全3巻>

いろいろな人が同居する叔父の家に
居候することになった高校生の話。


主人公が絡む人間関係がやや複雑なので序盤は混乱するが、
キャラクターがきちんと立っているので
しばらく読み進めると関係性が整理ができてくる。


いろいろな人が同居する下宿の面白さと
高校生らしい青春ものの楽しさが混在しており、
独特な居心地の良さが味わい深い。


割とシリアスな境遇をテーマにしているが、
全編ほのぼのした雰囲気が漂っており、
各登場人物の魅力に浸りながら読める良作。


【関連作品のレビュー】
水は海に向かって流れる(実写映画)

すがぬまたつやの4コマ<1~5巻>

作者がTwitterに投稿していた4コママンガを
1冊の本にまとめたもの。


既存の作品や日常でよく見る場面を
絶妙にイジったシュールなネタばかりで面白い。
1コマ目はよくある場面から始まるのに
2コマ目でいきなり斬新な展開になるという
独特なリズムが病みつきになってくる。


ゲームやマンガ、ネットで流行ったものが
元ネタになっていることが多いが、
おおむね前提知識がいらず、誰でも楽しめるものばかり。
ハズレが少なく、よくこれだけ思いつくものだと感心する。

野田ともうします。<1~2巻>

物事に独特の執着をしてしまう
変わり者の女子大生の日常を描いた話。


どこが面白いのかを言語化するのは難しいが、
ふとしたことに対する感じ方や反応が独特で
どういう行動を取るかが読めない主人公に
ジワジワと引き込まれてしまう不思議なノリがある。


特に何が起こるというわけでもなく、
キャラクターの個性に頼り切った内容だが、
シュールな味わいで気楽に読める作品。

天体戦士サンレッド<1~3巻>

世界征服を企む悪の怪人たちが
正義のヒーローに足蹴にされるコメディ。


子供向け特撮もののセオリーを逆手に取り、
妙に庶民的な悪の組織が
ヒモとして生活する態度の悪いヒーローに
邪険に扱われる内容になっている。


ヒーローの圧倒的な強さは揺るぎなく、
悪の組織の人の良さが伝わってきて苦労がうかがえる。
戦闘シーンは少なく、怪人の手配や日常生活との両立など
戦うまでのお膳立てに多くのページが割かれていて面白い。


自分の使命を果たすために
ヘコたれずにがんばる中間管理職の姿が楽しめる作品。

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