レビューブログ【レブログ!】

映画、アニメ、ドラマ、マンガ、書籍、英語読書の感想(ネタバレなし)が6000件以上!


叙述トリック短編集

読者の思い込みを利用してミスリードを誘う
叙述(じょじゅつ)トリックを用いたミステリー短編集。


映像作品では表現できない
小説ならではのトリックをウリにした1冊だが、
期待したほどの面白さは味わえなかった。


ほとんど改行せずページいっぱいに文字がびっしり詰まった文体は
かなり読みにくくて目が滑るし、
叙述トリックを紛れ込ませるためか、
どの話も無駄に文章が多く、全体的に冗長に感じた。


終盤でそのトリックが明かされても
スッキリとした気持ちよさがなく、
「その程度のオチなのか」と落胆することの方が多かった。


叙述トリックを前面に出したコンセプトは新鮮だったが、
せめてもっと無駄を削ぎ落とし、
テンポのいい文体にして欲しかった。

さるのこしかけ

もものかんづめ」につづく、さくらももこのエッセイ第2弾。


相変わらずの読みやすさで
読書に不慣れな人でもサクサクと読める。
エピソードごとに長さがかなり違うが、
文字数に縛られず最適なボリュームになっていて
笑いの勢いを失わずに楽しめると言える。


今回は子供の頃の思い出に加えて
漫画家になってからの経験談が多いが、
病気やケガ、旅行やペットの話がいちいち面白い。


マンガを読むような気楽さで楽しめる良質のエッセイ。


【関連作品のレビュー】
もものかんづめ(エッセイ)
たいのおかしら(エッセイ)
あのころ(エッセイ)
まる子だった(エッセイ)
ももこの話(エッセイ)
ちびまる子ちゃん(マンガ)
コジコジ(マンガ)
ももこの世界あっちこっちめぐり(エッセイ)
そういうふうにできている(エッセイ)
さくらえび(エッセイ)

人生はワンチャンス!

さまざまな偉人が残した格言を
犬の写真とともに紹介したもの。


本書のメインはたくさんの教訓で、
犬の写真はあくまで添え物の扱いなので
犬目当てに買うと期待外れに思うだろう。


有名な人たちの考え方が短い文で表現されており、
それぞれに生き方のヒントが凝縮されている。
1ページずつ区切られて紹介されているので
短時間でサクサク読める気軽さが良い。


ひとつひとつは割とあっさりした印象だが、
何かのスピーチに流用できそうな内容も多く、
毎日少しずつ読むだけでも得るものがある。

お金2.0 新しい経済のルールと生き方

世の中の価値観がどう変化しているかを
いろいろな要素から考察したもの。


「お金2.0」というタイトルではあるが、
仮想通貨やキャッシュレスといった経済界の話題にとどまらず、
どちらかというと社会変化全般に関する話題を扱った内容。


金銭では測れない価値観や人々の満足感について
すでに起こっている新しい動きを断片的に紹介していくが、
全体的に広く浅くといった印象で
今後の社会変化をふんわりと予測するばかり。


経済的な知識を身につけたい人にとっては肩透かしな内容で、
「お金2.0」という大きな看板に見合うほどの
特別な知見が得られる部分はなかった。


中身が薄く、冗長気味ではあるが、
将来に向けた世の中の変化について興味がある人向け。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

東大の入試を突破できるAIを目指す研究者が
AI開発の実状と若者の読解力について解説したもの。


今あちこちでもてはやされている「AI技術」の誤解や現状が
誰にでも理解できるよう非常にわかりやすく書かれており、
夢の技術のように思われている
ビッグデータやディープラーニングについても
その困難な部分や限界点がよく理解できる。


また、第3章で語られる現代の若者の読解力については
教科書が正しく理解できないことが
いろいろなデメリットにつながることがよくわかり、
調査結果から強い危機感を感じさせてくれる。


AI技術についてあやふやなイメージしか持っていない人や
人間の仕事が奪われると危惧している人にぜひ読んで欲しい良書。

UX(ユーザー・エクスペリエンス)虎の巻

ITエンジニアがUXに配慮したものを開発するときに
どういった注意や手順が必要かを解説したもの。


UXは「ユーザー・エクスペリエンス」の略で
要はユーザーが快適に利用できるための「使い心地」のことだが、
本書は建築物や道具のUXではなく、
あくまでIT関連のソフトウェアに特化した内容になっている。


ダラダラと情報を羅列するばかりの章はかなり退屈だったが、
第4章あたりからは具体的な流れをリアルに説明していて参考になる。
ただ、本としての構成や解説はイマイチで、
この題材のままもう少し高い完成度に仕上げて欲しかった。


また、どんな商品のUXを扱ったものかがわからないので
ITエンジニア向けの内容であることが
タイトルや表紙からわかるようにして欲しかった。

具体と抽象

具体と抽象

具体と抽象

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相反する具体化と抽象化に関して、
それぞれがどういう存在なのか、
生活の中でどう使い分けていくかを考察したもの。


他人の目に触れる説明や資料は具体的なものが好まれがちだが、
大切なのは状況に合わせた適切な抽象度であり、
必要に応じて適度に抽象化すべきという点は参考になる。
また、これまであえて意識をしていなかった状況でも
実は抽象化が大きく役立っているということもよくわかる。


ただ、定期的に挿入されているマンガや図はわかりにくく、
あまり理解の助けにはならなかった。
ほぼ同じ図が繰り返し登場するだけだったり、
変に茶化したマンガを挟むだけなら省いてもよかったように思う。


大きなインパクトを感じる部分や
自分の説明能力を向上させるような内容はないので、
具体化と抽象化についての概念を客観的にとらえたい人向け。

もものかんづめ

ちびまる子ちゃん」の作者であるさくらももこが
若い頃の経験を振り返ったエッセイ。


水虫や睡眠学習や家族の話など
作者の生々しい体験が赤裸々に語られていて面白い。
身の回りのこじんまりした話を
これほど引きつけて読ませるのは素晴らしい。


初期の「ちびまる子ちゃん」を想わせる雰囲気で、
誰にでも読みやすくテンポのよい良作エッセイ。
作者のファンはもちろん、
マンガの方をまったく知らない人にも勧めたい1冊。


【関連作品のレビュー】
さるのこしかけ(エッセイ)
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さくらえび(エッセイ)

物理表現のイラスト描画

物理表現のイラスト描画

物理表現のイラスト描画

  • 作者:平井 太朗
  • エムディエヌコーポレーション(MdN)
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爆発や水、気体などの絵として表現しにくい対象を
物理的な現象として分析しつつ
どのように描いていくかを解説したもの。


武器を使ったときの炎や爆発、
背景として描かれる雲や川、
多くの作品に登場する自動車など
いざ描こうとすると苦労するものについて
その原理や仕組みをわかりやすく説明している。


時間の経過とともにどういう現象が起こって
最終的な見た目になるのかがわかるのは興味深い。
日常生活でよく見るものでも、いざ説明されると
その構造を知らなかったことに気づかされる。


マンガやアニメーションを描く人が
きちんとした絵に仕上げていくためだけでなく、
CGムービーやゲーム制作に携わる人が
どう動かせばリアルに見えるのか考えるときにも役立つ良書。

老後の資金がありません

定年間際の夫を持つ女性が
予定外の出費の連続に悩まされる話。


子供の結婚費用、親の葬式代など
ある程度の年齢になった人が関わる出費が題材になっており、
家計が行き詰まっていく様子が描かれている。


出費の問題だけでなく周囲の人間との衝突が多いので
読んでいてずっとストレスを感じるのが辛いが、
それだけ深刻でリアルな内容と言える。
頭の回転が速く筋の通った息子の人柄が唯一の救い。


しかし後半になると作者が入れ替わったのではと思うほど
一転してリアリティのない筋書きに変わってしまう。
うまく話を収めることができなかったのか、
あまりにも都合が良すぎる展開が続き、
ストレスを我慢して読んだ前半は何だったのかと失望するばかり。


老後の生計の参考にもならず、
エンターテイメントとしても中途半端な作品。

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