読者の思い込みを利用してミスリードを誘う
叙述(じょじゅつ)トリックを用いたミステリー短編集。
映像作品では表現できない
小説ならではのトリックをウリにした1冊だが、
期待したほどの面白さは味わえなかった。
ほとんど改行せずページいっぱいに文字がびっしり詰まった文体は
かなり読みにくくて目が滑るし、
叙述トリックを紛れ込ませるためか、
どの話も無駄に文章が多く、全体的に冗長に感じた。
終盤でそのトリックが明かされても
スッキリとした気持ちよさがなく、
「その程度のオチなのか」と落胆することの方が多かった。
叙述トリックを前面に出したコンセプトは新鮮だったが、
せめてもっと無駄を削ぎ落とし、
テンポのいい文体にして欲しかった。