突然に原因不明の大惨事がニューヨークで起きたという設定で
劇中の登場人物が撮ったハンディカメラの映像が回収され、
それをひたすら観ているという内容。
それによって事件が本当にあったものではないかという
現実と空想の境目があやふやになる「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」的手法。
ハンディカメラの映像になっているというのは
今となってはそれほど珍しくないが、
その場合、低予算映画であるというのが通例だった。
が、今作はなかなか派手なシーンが多く、
ハンディカメラの映像ながら、うまく特撮を取り入れているため
映像的な迫力とハンディカメラ映像のリアリティが両立している。
この辺のクオリティの高さはなかなか良い。
事件導入部の見せ方もうまく、
登場人物と同様に「何が起きてるんだ!?」という混乱ぶりは素晴らしい。
肝心の部分がチラチラとしか見えないため、
全体の状況がつかめず、不安感が続く。
だが、ハンディカメラだからこそ手ブレも激しいので
映画館を含め、大きな画面で観ると酔う人が出るかもしれない。
そういうことから、観ていて疲れる映像には違いないので
75分程度という短い時間で終わるのは正解だったと思う。
しかしながら散々広げた風呂敷を畳まないまま終わるのは
非常にスッキリしないし、卑怯なところだろう。
最初に大きな事件を起こし、もったいつけておきながら
謎部分をハッキリさせないまま終わるというのはデキの悪いホラーの典型だ。
また、かなり厳しい状況が続く中、
それでもハンディカメラを離さないで映像を撮り続けるという部分に
徐々に不自然さが感じられてくる。
ハンディカメラ映像を選んだ時点でそういったジレンマや手ブレの存在、
ハンディカメラ以外の映像が使えないなど、いろいろな制限が付いてきてしまう。
一番気になったのは、主役と思われる男性の行動が非常に理不尽で、
あえて悪い状況へ導いているとしか思えない部分だ。
パニック映画だからこそ、必死で助かるべき行動を選択し、
それでも危機的状況に陥ってしまう方が感情移入できるだろう。
納得できない理由で周囲を危ない方向へ同行させるのは安易だ。
「HAKAISHA」という副題も最低だ。
タイトルに「破壊者」と付いている時点で、事件の原因が災害や事故ではなく
「敵」となる存在のせいだとバレてしまう。
こういった映画では完全に予測不可能な状態で観るのがもっとも楽しめるはずで、
「クローバーフィールド」という
意味のないコードネームがタイトルになっているのも
そういった意図からだろう。
それなのにわざわざ「HAKAISHA」と付ける制作関係者は頭が悪すぎる。
映像部分だけであれば、デキのいいB級ホラーになり得ただけに、
理解しにくい登場人物、消化不良なラスト、意味のない副題によって
かなりの部分で損をした作品だった。
【関連作品のレビュー】
10 クローバーフィールド・レーン