俳優のリリー・フランキーが書いた自伝的小説で、
母親に何度も支えられてきた人生を振り返ったもの。
九州の田舎町で育った日々の様子から
東京に出てきてからの生活について、
両親や身の回りの人とのエピソードを連ねている。
貧乏で悪だくみを繰り返して
欲望に負けたりダラダラしたり挫折したりする主人公だが、
どのエピソードも人間味があふれていて面白く、
読み始めるとなかなか止まらない引きがある。
「オカンとボクと、時々、オトン」というサブタイトルはピッタリで、
主人公が迷ったとき、困ったときに
芯の通った強い意志で助けてくれる母親にグッとくるし、
ふと登場して勝手なことに巻き込んでいく父親は
何をしでかすかわからない怖さがあって目が離せない。
ガンガン泣かせてくる話ではなく、
大半はバカな失敗談や貧乏話なのだが、
行間から漂ってくる人間臭さにジワリと来る。
500ページほどもある結構なボリュームだが、
エッセイのような文章で誰にでも読みやすく、
サクサクと楽しめる良作だった。オススメ。
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