ヒロシマの原爆にまつわる話だが、他の作品と違って
爆発する瞬間や、痛々しい表現などが出てこない。
登場人物のふとしたセリフや生活から
少し前に大きな事があった、ということが匂うぐらいだ。
しかし、だからこそあまりにも辛い想いが伝わってきて切ない。
普通の日常を描いているのに、どこか普通と違う、
そのわずかな差が原爆による被害の重さになっていて
グロテスクなシーンを描くよりも逆に心苦しいのだ。
全部で3話あり、最初は気づかなかったが
実は3話は時系列がつながっている。
数度読み返すうちに、わずかなヒントから
その3話の登場人物のつながりがわかり、また深い感慨を受けた。
短いが、深く心に残る良本。
【関連作品のレビュー】
夕凪の街 桜の国(実写映画)