日常生活の中に突如として感染型のゾンビが生まれる話。
ゾンビものの作品はたくさんあるが、
本作の主人公は漫画家を目指すパッとしない男で
「オタク」の代名詞のような風体と言動。
どう見ても主人公らしいところはないのが特徴。
そして第1巻をほぼ丸々使って主人公の人間性や
単なる日常生活を描き、巻末で急激に事件と接する流れが素晴らしい。
ゾンビに対して主人公らしく勇敢に戦うわけでもなく、
非常時でもオタオタとしながら逃げ腰なところが良い。
全体的に登場人物が人間臭く、それが妙にリアル。
「ドラゴンヘッド」や「座敷女」を描いた望月峯太郎に似たタッチがあり、
見開きページや止め絵をうまく利用した演出がうまい。
ゾンビ側にももともとの生活の名残があって、
セリフや行動パターンにそれが現れるのも非常に面白い。
違った切り口で描かれたゾンビもので、ストーリー引きも強く、オススメ。
ただ、序盤のインパクトは素晴らしかったのだが
巻数が進むに連れ、テンポが遅くなり
展開を引き伸ばしている感じになってしまった。
同じような場面ばかりで退屈に感じる方向性は残念。
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