ドキュメンタリー作家や大学教員として活躍する中年女性が
幼い頃に書いた文章をきっかけに
当時の体験が性的虐待だったことを自覚していく話。
性的虐待というと強い立場の者が
脅迫や暴力によって強引に行為に及ぶイメージがあるが、
本作では愛情を持った理解者として
徐々にターゲットを取り込んでいく様子が描かれている。
見せ方や構成が非常にうまく、
回想シーンによって徐々に真実が明らかになるだけでなく、
過去の場面に今の自分が混ざり込んで
あやふやな記憶を洗い出していくという表現が秀逸。
被害を受けながらもそれを正当化したり
都合の悪い記憶が抑圧されている様子から
正常な判断ができなかった当時の混乱ぶりが伝わってくる。
性的虐待の怖さや狡猾さがリアルに描かれ、
少女の受けた性被害を生々しく追体験できる作品。