真面目に勉強し、大学を卒業した学歴があるにも関わらず、
就職活動に失敗したり、
就職について思い悩んだりする若者の事例を紹介したもの。
社会に適応できない若者を支援するNPO法人「育て上げネット」が扱った
支援事例をもとにしたフィクションということだが、
どの部分がどの程度フィクションなのかが説明されておらず、
行き詰まった若者たちの社会復帰が成功したエピソード自体が
フィクションだったり大きく脚色している可能性もあり、
すんなりと内容を受け入れるには抵抗を感じた。
新卒での就職に失敗した人や入社後すぐに辞めてしまった人、
就職そのものを挫折した人などが紹介されていて、
それぞれハッピーエンドのような展開でまとめられているが、
「いろんな人が、いろんなきっかけで運よく成功した」という域を超えておらず、
似たような経験を持つ人にも同様の対処法が役立つとは言えない。
大卒なのに無職になってしまった、という彼らの境遇は
就活時期を迎えるまでに自己分析や職種研究をし、
自分の希望進路の確認や受験対策をしておく、という
一番確実に就職を成功させる準備を怠った部分が大きい。
無職の人が勇気を出すために彼らのエピソードを読む、というのは賛成だが、
彼らがうまくいったから
同じような状況になっても大丈夫、という考えは危険だ。
余裕を持って希望の進路を見極め、
一般的な学生たちと同じタイミングで就職を成功させるのが
もっとも負担が小さく、難易度が低いということは事実だ。
本書を読んで「なんとかなるから後回しにしよう」とは思わないで欲しい。
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