「あしたのジョー」や「あした天気になあれ」をはじめとする
さまざまな名作を生みだした漫画家ちばてつやが
自分の生い立ちを振り返りながら描いた自伝エッセイ。
不安定な満州で暮らした幼少時代や
そこから苦労して帰国する話は
なかなか他作品では味わえない貴重な内容。
ちばてつやが徐々に漫画家に至る流れも興味深い。
水木しげるによる似たようなコンセプトの「わたしの日々」と比べても
それぞれのエピソードが濃く、読み応えがあって面白い。
読者へのわかりやすさを今でも意識しているだけあって
どの場面も状況がスムーズに理解できるし、
1話完結で楽しめるのに全体の流れも感じる。
ちばてつやのファンでなくても引き込まれる内容で、
戦時下を生き延びたリアルな体験が読める1冊。
ただ、巻が進むに従って回顧録がどんどん減り、
ただ高齢者の日々を描いた日記になってしまうのは残念。