重度の精神障害を抱えた患者を
説得して医療施設に移送する業務を記録したもの。
統合失調症やアルコール依存症、
家庭内暴力や引きこもりを患う子供に
長期にわたって悩まされた家族が耐えきれなくなって
専門機関に依頼してきた様子を描くが、
その壮絶さがリアルに伝わってくる描写が強烈。
社会と断絶しているせいで客観的になることもできず、
自分が病気だという自覚がないまま
幼稚な不満や欲求を容赦なくあらわにするところが何より厄介。
家庭という閉鎖的な空間で容赦なく暴れるため、
周囲にほとんど気づかれないまま
家族ばかりがどんどん追い詰められていく。
また、家族の方も世間体や保身のために
都合の悪い事実を隠そうとするところがタチが悪い。
世間から遠ざけるという解決法しかないため
スッキリできるような読後感はないが、
普段目にすることがない隠れた社会問題と
精神疾患がいかに家族を苦しめるかを知ることができる作品。