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残像に口紅を

作家である主人公が友人と共謀し、
言葉が少しずつ失われていくとともに
その文字によって表現されていたものも
消失していく世界を体験する話。


50音に濁音・半濁音を加えた言葉がランダムで少しずつ消えていき、
それに伴って世の中から物体や概念や表現が失われていく話だが、
その内容を伝える文章自体も
残存する文字だけを使って書かれているのが面白い。


使用頻度の低そうな文字から消えていくのは仕方がないが、
一番最初に消えるのが「あ」で、
以降、この音が本文で一切出てこないという不思議な感覚は
本作でしか味わえないものだろう。


消えてしまったあとはその文字が使えなくなるため、
人名に対して事前に意識しておかないと
誰が消えたのかハッキリしないという不便さはあるが、
一般的な呼び方ができなくなっても別の言葉で表現したり
回りくどい言い方で伝えようとするノリも新鮮。


かなり実験的な作品で、言葉が失われても
どこまでの内容が表現できるのかという意味では興味深いが、
反面、表現に制限が出るためにスピード感や娯楽性が犠牲になる。


ストーリーとして惹きつけられる部分はあまりないので
あくまで新しい試みを体感するための作品。

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