認知症が進み、介護施設で暮らす老人が
友人から託された手紙によって行動を起こす話。
妻が死んだことさえたびたび忘れてしまうような状態の高齢者が
手紙に記された使命を果たすために出歩いていく緊迫感と
そこまでさせる動機が気になって一気に引き込まれる。
正体のわからない人物に会っていく筋書きと認知症による症状が
うまく緊張と緩和につながっていて面白い。
第2次世界大戦でのナチス・ドイツによるユダヤ人迫害や
強制収容所の知識が必要となるものの、
終盤で一気に明らかになる全体像は
それまでの期待感に十分見合うだけの驚きがあった。
いろいろな設定を絶妙に活かしたサスペンスの良作。