残業へのペナルティとして会社と社員の両方に税金を課する
「残業税」という制度が作られた社会を舞台に、
残業税調査官が不正に立ち向かう様子を描いた話。
サービス残業や非常識な労働時間が問題になる今、
残業に対して税金を設定することで残業を抑制しようとするアイデア、
また残業代を支払わないことが脱税扱いになるという点など
残業税という設定は非常によくできていて面白い。
その上でその制度の穴を突く不正が描かれ、
実際にありそうな方法が展開されるのも興味深い。
そういった妙なリアリティが本作の魅力。
ただ、残念ながら小説としての面白味に欠ける部分があり、
感情移入しやすい魅力的なキャラクターもいないし、
事件が解決してもどこか冷めている主人公がつまらない。
ストーリー展開は都合が良すぎるし、
先が気になる、というほどの引きもない。
残業税という設定は非常に面白いし、その必要性を考えさせられるが、
肝心のストーリーの魅力をもっと大切にして欲しかった。