高校の授業で行われたとある実験を通し、
人々がいかにして独裁状態に陥っていくかを描いた話。
独裁政治が推奨されないことや、
ヒトラーが率いたナチの問題点を知っている生徒なのに
徐々に独裁に浸っていく過程が非常に面白い。
独裁に従う心理に懐疑的な生徒たちが
いきなり指導者の言いなりになるわけではなく、
まずは簡単な集団行動と、抵抗されにくい規律から始まり、
集団に対しての貢献が推奨され、結束が強くなっていく流れは
冷静に観ていてもなるほどと思わせてくれる。
集団心理の怖さというか、本人たちには悪意がなく、
むしろみんなのためにがんばっているという空気がリアルで、
一団となって過ごすことの心地よさが伝わってくるのが怖い。
強硬派、心酔する者、勧誘者、異端児などの存在が
自然に生まれていくのも興味深い。
それなりに登場人物も多く、複雑な心理を描く割に
テンポもよくて非常に観やすく仕上がっているのもよい。
一種のサイコサスペンス作品としてもオススメ。