ある任務を果たすために宇宙船に乗る男性の話。
導入部から引き付けられる展開と読みやすい文章で、
自分の置かれた状況がまったくわからない主人公が
周囲の様子を手がかりに推測していく現在の描写と
そこに至るまでの経緯を描いた回想シーンが
ジワジワと結びついていく流れに引き込まれる。
ひたすら主人公の主観視点で展開するだけに感情移入がしやすく、
未知のもの対して論理的な思考を駆使して
予想と実証を繰り返していく様子が気持ちいい。
かなり深刻な状況なのにもかかわらず、
常にコミカルな雰囲気が漂うのも面白い。
全2巻合わせて700ページほどと結構なボリュームだが、
読み始めたら止まらない引きの強さがあり、
知的好奇心がグリグリと刺激される。
危機的な場面が何度も訪れて盛り上げる上に
その解決法にもいちいち興奮させられる。
理系の人向けではあるが、
地球とは違う世界が味わえるSFの傑作。