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はだしのゲン<全10巻>

第2次世界大戦で広島に原爆が投下されたあと、
悲劇的な状況の中で生き延びようとした少年の話。

1973年に連載されていた古い作品だが、
戦争の悲惨さを伝え、なおかつマンガという読みやすい媒体から
小学校などにも置かれたりしており、非常に有名。

「はだしのゲン」といえば原爆の話、というイメージがあり、
確かに広島への原爆投下をキーにしてはいるが、
全体としては戦争によって国民が受ける
さまざまな被害について描かれている。

実際に原爆が落ちるまでにも戦時下ということで
一般の人々がどれほどの辛さを味わっていたか、
普通の生活を我慢させられていたか、
また、左翼的な言動がいかに迫害を受けるかがわかる。

極限状態だと人間の嫌な部分が露骨に表れ、
道徳心や正義感が失われてしまうことがわかる。
自分の身が不安な以上、他人まで気持ちを向ける余裕がなく、
必要以上に周囲に敵意を向けている雰囲気がある。

主人公の元(ゲン)がたくましく、めげない性格なのが幸いだが、
境遇としてはとにかく辛いものが序盤から連続するため
読みながらどんどん憂鬱な気分になるのも確か。
だが、そういった気持ち自体が
戦争の悲惨さを味わうということなのだともいえる。

マンガとしての魅力があるのも事実で、
読み出すとなかなか止まらないのだが、
全体的にかなりの後味の悪さを覚悟して読んでもらいたい。
最終巻付近は作者のメッセージが強いためか、
やや説教臭くなってしまっているのが残念。

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