マンガ「20世紀少年」の実写映画版3部作の完結編。
原作全巻とこれまでの映画2作はチェック済み。
今作の内容としては「ともだち暦」から最後まで。
第2章と同様の、原作未読な人には理解できないであろう駆け足感。
各エピソードは完全に省略されるか、ひどく浅くアレンジされてしまい、
それぞれの登場人物の動機や想いの変化が納得しにくいことがある。
もはや遠藤カンナがなぜ「最後の希望」なのかは不明で
単にリーダー資質のない行き当たりばったりな少女に見えるし、
ともだちランドのナビゲーター高須は単純な配下に成り下がった。
カンナがいつも古いカセットを聞きまくっている描写が少なく印象が薄いので
聞いたことがないフレーズがラジオから流れたことが
ケンヂの生存を意味することもわかりにくい。
敷島教授の娘の彼氏だった優男は万丈目に役目を奪われて不在となった。
カツオとサナエはただの2人暮らしで、オッチョに堂々と食事を振る舞い、
無意味にリアカーを引いている。
原作とは異なる結末と噂されていたが、結果から言えば
期待していたような新たな展開はなく、原作とごく同じ筋書きであった。
あえて言うなら「最初からずっと『2人目』のまま」という変更がなされており、
むしろ原作よりも浅い展開になったと言えよう。
エンドロールが終わってからのエピソードのみ、原作よりも少し詳しくなっており、
ややスッキリした後味にはなる。
2時間半もの長さがあるが、変に原作の筋をなぞろうとしたためか
非常に薄く長くなってしまった印象がある。
通行手形で塀を突破するエピソードやカツオとサナエの2人、
ユキジの柔道道場の解散などは省いても問題なかっただろう。
その分、ともだち周りの物語を濃くして欲しかった。
第1章からのキャスティングは文句なく、
ちょくちょく登場するゲスト的なタレント・俳優の設置も面白い。
特撮部分も含めて映像的には原作の雰囲気をきっちりと再現している。
そういったあたりは非常に評価できるが、
ともだちの異常性、カリスマ性、幼稚さ、妬み、恨みの見せ方が薄く、
その最後に関しても少しあっけないものだった。
映画では「スーダララ♪」の歌がなぜそんなに浸透しているのか、
みんなして万博会場に集合するほど惹き付けているのかもわからない。
抑圧され、あらゆる制限下で誰もが偶然に出会ったという前フリと
そこにわずかな希望と未来を感じなければ
あんなにも大勢がフェスティバルに集まる理由にならない。
(実際に流れるスーダララの歌もそこまで魅力を感じない)
映画版第1章は非常にうまい映像化で、今後に期待させ、
原作知らずの人にまで魅力を伝えてくれたのだが、
第2章、最終章とは原作の枠と上映時間に縛られすぎて
結局は代表的な場面をさらって、なんだかよくわからないうちに
ご都合的に終わりを迎えるという作品になってしまった。
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