レビューブログ【レブログ!】

映画、アニメ、ドラマ、マンガ、書籍、英語読書の感想(ネタバレなし)が6000件以上!


自分の頭で考える

話題となった「ハズキルーペ」のCMの指揮を執り、
いろいろな企業の買収や立て直しを手掛けた実業家・松村謙三が
自身の考えや判断基準をまとめたもの。


前半はハズキルーペのCMが生まれた経緯が書かれているため、
「プレゼン編」「銀座クラブ編」「舞台リハーサル編」の3本を
知っている方が理解しやすい。


商品名とウリをストレートに訴える大胆なCMで
世間に大きなインパクトを与えたハズキルーペだが、
CM業界の先入観や慣習によるさまざまな障害があり、
紆余曲折の上に誕生したことがよくわかる。


プロの立場を尊重し、成果を出す機会を与えながらも
企画意図を実現してくれない結果に憤慨する様子は共感できるし、
自身の考え方を貫き通し、
CMによる費用対効果を最優先した判断が功を奏する結果も清々しい。


後半は企業買収やその立て直しに伴う苦労が語られており、
いろいろな苦労に共感できるとともに
利益を妨げる障害を的確に見極めて削ぎ落とす潔さが参考になる。


ハズキルーペが有名になるよりもずっと前から
実業家として手腕を発揮していたことがわかり、
ビジネス書としては後半の方が読み応えがあって面白い。


特徴的なCMからイロモノの存在に思われやすいが、
さまざまな企業に携わってきた実業家の経験が
裏で支えとなっていることがよくわかる1冊。

黒いマヨネーズ

お笑いコンビ、ブラックマヨネーズの吉田 敬が
自身の生い立ちを踏まえて書いたエッセイ。


誰にでも読みやすい文章だし、
ひとつひとつのエピソードが短めなので手軽に読める。
ただ、爆笑するほど面白いかというとそれほどでもない。


ネガティブな気持ちを正直に訴えている部分は評価できるが、
妄想を垂れ流している部分は全然面白くない。
笑いやスッキリした読み応えがあるわけではないので、
せいぜい卑屈で文句まじりの思いを共感するためのエッセイ。

しょうがっこうがだいすき

小学2年生の女の子が、自身の経験をもとに
小学校入学を控えた子供へのアドバイスを書いた本。


「大きな声で返事ができるようになっておこう」
「勇気を出してお友達に声をかけてみよう」など、
学校生活を充実させる上で実用的な指示とともに
そうすべき理由がきちんと書かれており、
アドバイスに従った方が有益だということがわかる。


新入生のことを本当に考えたものばかりだし、
「人の話を聞けるようになろう」
「難しいと思うことは練習しよう」など、
大人であっても心がけるべき内容にはハッとさせられる。


小学校入学を控えた子供向けということで
ターゲット層はかなり限られるが、
親が読み聞かせをして学校生活の心構えをする本としては最適。

100万回シェアされるコピー

Web上で話題になったさまざまな広告について
その内容や手法を解説したもの。


新聞広告やテレビCMの影響度が下がり、
インターネット上でいかにバズるかが勝負となる広告業界だが、
実際に話題になったいろいろな事例がたくさん紹介されている。


クドクドとした分析が続くのではなく、
具体例をたくさん挙げて
それに当てはまるルールをシンプルに提示していく。


それぞれ写真付きで掲載されているので
その広告を知らない人にとっても
どういう点が優れているのかイメージしやすいし、
ひとつひとつの解説文が短めでテンポよく読めるのもよい。


シェアしたくなるポイントが
どこにあるのかを知ることができる内容で、
広告業務に携わっていない人でも得るものがある1冊。

レンタルなんもしない人のなんもしなかった話

工夫や判断が必要なことは引き受けず、
ただ指示された場所にいるだけのサービスを始めた男性の
日々のTwitter投稿をまとめたもの。


交通費以外の報酬を受け取らないとはいえ
食事に付き合う程度のサービスがどれほど役に立つかと思ったが、
意外にもただ一緒にいて欲しいという需要があることに驚く。


実際に役立っている様子が伝わってくるのは微笑ましいし、
書き込みの端々から作者の考える価値観や
世の中にいろんな人がいることが垣間見えて面白い。


能力を発揮するつもりのない消極的な作者と
表立って主張できない人々が織り成す絶妙な空気感が楽しめる本。

新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング

わかりやすく読みやすい文章を
書き上げていく手順を解説したもの。


音楽をはじめとするニュースサイト「ナタリー」で
記事を量産できるライターになるための方法がまとめられている。
すんなり読める文章を作るためのポイントが
簡潔で論理的に説明されており、
どう書けば文章が改善できるのかが非常にわかりやすい。


1つの項目が2~3ページと短いのでテンポがよく、
例文と改善後の比較が明確だし、
文章がよくなっていることが具体的に体感できるのが素晴らしい。


悪文にしないために押さえるべきポイントが一目瞭然で、
何かを説明する文章を書く人なら必見の教科書。


【関連作品のレビュー】
ナタリーってこうなってたのか

自分の頭で考えて動く部下の育て方

指示待ち人間ではなく、
自分で考えて行動できる人を育てる方法を紹介したもの。


上司が何もかも説明しすぎたり、
優れた見本を見せてしまうのではなく、
業務内容について質問しながら
適切な方向に導いていくという方法は参考になる。


失敗を恐れるあまり行動力が下がったり、
強く言われて萎縮したりする人が多い時代なので、
やり方を相談しながら
自主性を鍛えていくというのは効果的に思える。


部下を持つ上司に限らず、
新人教育の担当者や学生を受け持つ教員など
誰かを育成していく立場の人なら読んでおきたい1冊。

お金持ち生活のつくり方

大きな資産を作り上げられるために
どういう生活スタイルでいるべきかを解説したもの。


金持ちとそうでない人の違いについて説明した序盤は
納得できる部分が多く、入門者にぜひ読んで欲しい内容。
ただ、中盤以降は中身が薄く、
同じような話が繰り返されるばかりだし、
例え話ばかりで逆にわかりにくくなっている。


金持ちになるために推奨されている習慣も
どうにもこじつけ感が強く、
それぞれの行動を取るべき根拠が弱い。


自己啓発書としても投資入門書としても中途半端で、
もっとそれぞれの目的に合った本に手を出す方がいい。

サカナとヤクザ

暴力団の資金源となっている密漁について
その実態を調査したルポ。


築地市場や漁場に乗り込んで
内部から様子をうかがう緊迫感が素晴らしい。
一般に知られていない闇の部分が
いろいろと垣間見れる刺激が味わえるとともに、
密漁にもいろいろな工夫があることがわかって面白い。


リスクを下げつつビジネスを成立させないといけないので
ヤクザと言えども試行錯誤しているところは
真面目なのか不真面目なのかわからなくて笑ってしまう。


後半の第4章以降は、現地取材というより
淡々と情報をまとめただけの印象になってしまい、
緊迫したリアリティが薄くなっているのは残念。


第3章までの前半部分は引きの強い内容と読みやすい文章で
どんどん読み進めてしまう魅力がある。
密漁や暴力団に興味がなくても読み物として楽しめる1冊。

パッとしない子

小学校の教師として働く主人公が
人気アイドルに成長した元教え子と再会する話。


世間で評価される存在に成長した教え子との再会で
どんなドラマが描かれるのかと思って読み進めたが、
非常に後味が悪く、強い嫌悪感を追体験させられる内容。


悪意のない悪行がいかに周囲を傷つけ、
恨みを抱いている側の想いが深いかがリアルに伝わってくるものの、
こういう作品を読んで
わざわざ嫌な気分になる必要性がわからない。


ホラー作品として受け取るべきなのかもしれないが、
カタルシスを感じる部分がどこにもなく、
救いのない筋書きはかなり人を選ぶだろう。

総アクセス数