谷底ライオン

谷底ライオン

千尋の谷に突き落とされたまま
這い上がれなかったライオンたちを描いた４コママンガ。

舞台やキャラクターは違うが
同作者による「クマのプー太郎」とよく似た作風で、
ひたすらシュールなネタが収録されている。

2009年頃の時事ネタも含まれるので
今となってはわかりにくくなってしまったものもある。
後半はまたシリーズの違う短編ネタになるが、
よりシュール度が上がっていて理解に苦しむことができる。。
中川いさみ特有のノリが好きな人向け。

【関連作品のレビュー】
重粒子の旅 鼻にガンができた！（コミックエッセイ）
マンガ家再入門（コミックエッセイ）

虐待父がようやく死んだ

虐待父がようやく死んだ (バンブーコミックス エッセイセレクション)

父親からの暴力・暴言に苦しんだ作者が
異常な家庭で育った日々を振り返ったもの。

周囲から見えないＤＶ行為が
どのように行われるのかという生の体験談が恐ろしい。
自分に対する暴力だけでなく、言葉による蔑みや親同士の喧嘩で
どんどん卑屈に追い詰められている様子がわかる。

読んでいると辛い思いを追体験することになるが、
家庭内暴力の実録エッセイとして
そういったリアルな状況が垣間見えるのは貴重。

また、ふと冷静になった作者が
自身も歪んだ感覚を持っていることに気づく部分があり、
同じような境遇の人が自分を客観視する助けにもなる。

家庭内暴力によって周囲の人間にも
負の影響が広がっていく様子が描かれており、
虐待の連鎖がなかなか途切れない怖さが伝わってくる１冊。

【関連作品のレビュー】
美大とかに行けたら、もっといい人生だったのかな。

私はカレン、日本に恋したフランス人

私はカレン、日本に恋したフランス人【電子限定特典付】 (FEEL COMICS)

日本が大好きなフランス人女性が
どのような想いを積み重ねてきたかをつづったエッセイ。

フランス人と結婚したマンガ家の男性が
日々の生活を描いた「モンプチ 嫁はフランス人」の
妻側の目線から描いた作品だが、
中盤以降は夫婦両方の立場で語られるので
単体としても続編としても読むことができる。

フランス人から見て日本のどういうところに
興味を持つか、感銘を受けるかという感覚は新鮮で、
日本人があまり意識しないことに感動している様子は面白い。
また、日本を全力で愛してくれるのも嬉しい。

後半ではフランスと日本の違いが語られており、
日本人の持つイメージだけではわからなかった
フランス暮らしの生の感想が聞けるのは貴重。
生活する上での不便や感覚の違いがよくわかる。

ただ個人の生活を描いたエッセイではなく、
２つの国と人種の違いを客観的にとらえた
良質な資料として読み応えがあった。

【関連作品のレビュー】
パリ愛してるぜ～
かかってこいパリ
パリが呼んでいる
モンプチ 嫁はフランス人

ダーウィンズゲーム＜１～４巻＞

ダーウィンズゲーム　１ (少年チャンピオン・コミックス)

固有の超能力を付加された者同士が
ポイントを目当てに殺し合うゲームの話。

「バトル・ロワイアル」や「ダズハント」「BTOOOM!」など
最近増えてきた制限環境の中で殺し合いをする内容だが、
それぞれが隠された特殊能力を備えているところが
戦いに深みを持たせていて面白い。

主人公が能力や味方に恵まれすぎている感はあるが、
派手な戦闘シーンと先の読めない展開が楽しめる。
デスゲーム系の作品が好きな人向け。

クマのプー太郎＜半分＞

クマのプー太郎 半分 (IKKI　COMIX)

人間と擬人化された動物によって描かれるシュールな４コママンガ。

1990年前後に連載されていた作品群の中から
前半を丸ごとを収録したかなりのボリュームの１冊。

テレビアニメ版とはずいぶん印象が異なり、
「伝染るんです。」を連想させる作風で、
不条理ネタだけでなく下ネタも混在する。

どういう面白さなのか理解できないものもあるし、
笑えるかどうかはかなり人を選ぶが、
大量のネタが収められているのでコストパフォーマンスは高い。
青年誌のスミに載っている４コママンガが好きな人向け。

【関連作品のレビュー】
重粒子の旅 鼻にガンができた！（コミックエッセイ）
マンガ家再入門（コミックエッセイ）

海猿＜全12巻＞

海猿 完全版 1

海上保安官になった若者が
さまざまな事件・事故を経験していく話。

実写化された映画作品が非常に有名だが、
原作マンガの主人公は19歳とずっと若く、
精神的な未熟さや無鉄砲さも描かれている。

人の死が描かれることも多く、
各エピソードの後味はそれほどよくないが、
目が離せない危機的状況が続くため、
止めどきを失って読んでしまう引きの強さがある。
あまり馴染みのない海上保安官という職業が
どんな苦労と危険に接しているかもよくわかる。

感情移入できるキャラクターは少ないが、
少年マンガの王道的なノリと違う
重々しいストーリーが味わえる作品。

【関連作品のレビュー】
海猿（実写映画）
海猿 UMIZARU EVOLUTION（テレビドラマ）
漫画貧乏（マンガ）

マンガでまるっとわかる！ 株の教科書

カラー版　マンガでまるっとわかる！ 株の教科書 [資産運用勉強シリーズ]

株式投資に関する基本的な知識と用語を解説した本。

株に関してまったく知らない人向けに
基礎知識や用語を丁寧に説明している。

文章ページでの解説もあるが、
ひとつひとつの項目が端的にまとめられているので、
１冊をざっと読むだけで
株式投資に関する基本的な知識が網羅できる。

株式投資をこれから始めようと思っている人や
最近始めたばかりの初心者なら
本書を教科書として持っておくだけで
たいていの疑問を解消することができるだろう。

【関連作品のレビュー】
マンガでまるっとわかる！ 投資信託の教科書

マンガ家再入門＜１巻＞

マンガ家再入門（１） (モーニングコミックス)

マンガ家の中川いさみが、大御所のマンガ家たちに
作品を作るときの考え方についてインタビューしたもの。

大友克洋、松本大洋、ちばてつや、弘兼憲史など
有名作品を手掛けたマンガ家たちが
それらをどのように生み出してきたのか、
それぞれの個性が垣間見えて面白い。

また、インタビューで聞き出した内容を
中川いさみなりの解釈で説明し直すのもいい。
真面目な内容なのに
とぼけた作風で描かれていてホッとする。

インタビュー相手の作品を知らないと
あまりピンとこないかもしれないが、
ベテランマンガ家たちの作品に対する考え方を知れる本。

【関連作品のレビュー】
重粒子の旅 鼻にガンができた！（コミックエッセイ）
クマのプー太郎（マンガ）
谷底ライオン（マンガ）

応天の門＜１巻＞

応天の門　1巻 (バンチコミックス)

女好きで人心掌握に長けた在原業平（ありわらのなりひら）と
博識で洞察力に長けた菅原道真（すがわらのみちざね）が
平安時代に起こるさまざまな事件を解き明かしていく話。

頭脳派で探偵のような菅原道真と
政治力や行動力の高い在原業平が
それぞれ人間味があふれていて感情移入しやすく、
異なる長所を持った２人のキャラクターが
うまくバランスをとりながら
事件を解決に導いていく展開が面白い。

ミステリーの要素を含む読後感のよい人間ドラマになっており、
歴史に関する知識や興味がない人でも楽しめる良作。

数字であそぼ。＜１～11巻＞

数字であそぼ。（１） (フラワーコミックスα)

スバ抜けた暗記力を持ちながらも
大学の数学の授業でつまずいた主人公が
その理屈を１から学び直す話。

多くの人が苦手意識を持つ数学に対して
用語の意味や考え方を丁寧に解説していく。
数学のわかりにくいところに対する主人公の嘆きが
まさに共感することばかりで面白い。

数学を題材にした作品ながら
「動物のお医者さん」を思い出すとぼけた雰囲気があり、
数学が得意な人も苦手な人も楽しめる良作。