田舎の小さな村に暮らす一家に焦点を当て、
家族それぞれの悩みを描いていく話。
シュールといえば聞こえがいいが、
脈絡のないエピソードが展開されるばかりで
ひたすら意味もオチもないまま進んでいく印象。
奇妙な世界観を見ているだけで満足できる人ならいいが、
映画としては盛り上がる場面もないまま
2時間20分を超える長さというのが辛すぎる。
観る人によってかなり評価の分かれる作品で、
合わない人にはまったく面白くないだろう。
1990年代の終わりに日本の大手新聞社に入社したアメリカ人が
刑事やヤクザとの関係作りに苦労しながらも
とあるサラ金業者に絡む秘密を追求していく話。
東京を舞台に日本人俳優が多く登場しているが、
あくまでアメリカが制作したドラマで
どの立場の人間も英語が話せる独特の世界観。
いろいろな組織の怖い部分が映し出されるが、
主人公が大胆に行動していく
第4話を過ぎてからの方が面白い。
ピリピリした緊迫感の中で
何が起きるかわからない怖さに中毒性がある。
海外製と気づかないぐらいしっかりした日本が描かれ、
見応えのある内容に仕上がっている佳作。
女性教師に想いを寄せる高校生と
その幼馴染との恋愛模様を描いた話。
大人の女性に憧れる若者のリアルな様子と
それを見てヤキモチを焼く幼馴染が微笑ましい。
吉永小百合の出演作の中では珍しく彼女の存在感が薄いが、
かわいらしく気の強いキャラクターは魅力的。
中盤以降がスローテンポで退屈なのが残念だが、
若い頃特有の勢いに任せた行動力と
思い通りにいかない切なさが味わえる作品。
第2次世界大戦中の硫黄島において
アメリカ軍と戦う日本軍の様子を描いたもの。
日本兵たちに焦点を当てた内容ではあるが、
クリント・イーストウッド監督をはじめとする
海外スタッフによって作られたアメリカ映画となる。
また、同監督の「父親たちの星条旗」とは対の関係になっており、
アメリカ側の視点で描かれたそちらを観ておくと、
その裏側を垣間見るように本作を味わうことができる。
ただ、1本の映画として見た場合、
型破りな陸軍中将が部隊をテコ入れしたり
有効な作戦で敵を撃退するような場面がほとんどないので
どうにも気持ちよさや面白さを感じられないのが残念。
2時間20分と非常に長いボリュームの割に
敗色濃厚な日本兵たちがそのまま負けるだけという
厚みのないストーリーで、とにかく退屈だった。
【関連作品のレビュー】
父親たちの星条旗
第2次世界大戦中の硫黄島において日本軍と戦ったアメリカ軍の様子と
そこで撮られた「硫黄島の星条旗」の写真をめぐる話。
序盤に描かれる上陸戦の様子は
「プライベート・ライアン」にも劣らない迫力があり、
双方の勢力がぶつかった壮絶さが伝わってくる。
史実に基づく作品だが、映画としての構成が秀逸で、
戦闘中の様子と帰国後の騒ぎと息子の視点を織り交ぜながら
それぞれが徐々に掘り下げられていくのが素晴らしい。
登場人物が多いのでどの話題が誰のことなのか混乱するが、
たくさんの仲間を失った兵士の悲壮感や
政治的な思惑で振り回される心情が描かれており、
単なる戦争映画以上の気持ちに浸ることができる良作。
【関連作品のレビュー】
硫黄島からの手紙
即興芝居の教室を開いている女性と
パッとしない2人とともに警察に協力する形で
ドラッグを扱う犯罪組織に接触する話。
冴えない会社員や役者かぶれの男など
キャラクターは個性的で悪くないのだが、
たどたどしい演技ながら偶然が重なって
筋金入りの悪人だと思われる予想通りの展開で、
コメディとして笑えるほどの面白さはない。
かといってアクションやスリラーといえるほどの没入感もなく、
まずまず有名な俳優が出演している割に
全体的に中途半端な仕上がりだった。
とある家に下宿することになった医学生が
下宿屋の娘と親しくなっていく話。
非常にシンプルな筋書きだが、
強気で意地っ張りな主人公の言動はかわいらしいし、
それを取り巻く人たちの温かさも心地いい。
下宿人と結婚した姉たちのような
安易な選択はしたくないと言いつつも
ジワジワと医学生に惹かれていく様子が微笑ましい。
安心して観ていられる予想通りの展開だが、
いろいろな人が幸せになっていくことに癒される佳作。
「ワンダー 君は太陽」で主人公をいじめていた少年の祖母が
まだ学生だった第2次世界大戦の頃に
ユダヤ人として周囲から迫害された当時を思い返していく話。
原作者が書いたアナザーストーリーを映画化したものだが、
前作の筋書きやイジメっ子の存在はほとんど関係なく、
完全に独立した作品として観ることができる内容。
平凡な日々がドイツ軍の介入によって一気に崩壊するが、
ユダヤ人の生活が脅かされていく緊迫感と
心優しいクラスメイトとの微笑ましいやり取りが
絶妙なバランスで心を揺さぶってくる。
幸せそうな描写が続くほどに
悲劇が訪れる予感が増していき、
2人の平和を祈りながら目が離せなくなる。
映画としても非常に秀逸な構成で、
世界観や登場人物をうまく活かしたながら
いろいろな要素を無駄なくまとめ上げている。
前作を観ているかどうかは一切問われないので
ひとつの傑作としてぜひいろいろな人に観て欲しい。