レビューブログ【レブログ!】

映画、アニメ、ドラマ、マンガ、書籍、英語読書の感想(ネタバレなし)が6000件以上!


同志少女よ、敵を撃て

第2次世界大戦中のソビエトにおいて
ドイツ軍に家族を殺された少女たちが
狙撃兵として訓練を積んでいく話。


ドイツやルーマニアと戦ったソ連の戦史をベースにしているが、
小難しい話はそこまで多くはなく、時間を飛ばしながら
見応えのあるシーンをテンポよく拾っていく構成なので
普段あまり小説を読まない人でも入り込みやすい作風。


女性兵ばかりで構成された狙撃手専門の部隊を軸に
その厳しい訓練の様子から実戦までを描いていくが、
読者が期待するような王道の場面と展開が多く、
スターリングラード」や「アメリカン・スナイパー」のような
興奮するビジュアルが次々と浮かんでくる。


戦争を題材にしているので残酷なシーンも多いが、
あくまでエンターテインメントに焦点を合わせており、
感情移入しながら気持ちよく読めるよう仕上げた作品。

薬菜飯店(やくさいはんてん)

筒井康隆の書いた7つの短編小説をまとめたもの。


収録作品
 ●薬菜飯店(やくさいはんてん)
 ●法子と雲界(ほっすとうんかい)
 ●イチゴの日
 ●秒読み
 ●ヨッパ谷への降下
 ●偽魔王
 ●カラダ記念日


作品ごとにいろいろな世界観を題材にしているが、
セリフ部分も多いので思った以上に読みやすい。
ストレートなエログロ表現も豊富で
情景を思い浮かべながらサクサクと読める。


ただ、面白いのは書籍名になっている「薬菜飯店」ぐらいで
それ以外はどこに面白みを出そうとしているのかわからなかったり
長さの割に退屈だったりと満足度が低かった。

たべるのがおそい<1巻>

いろいろな作者による
小説、短歌、エッセイ、詩などを集めたもの。


作者によって世界観も文体も異なるので
作品による当たり外れというか、
好みの合う合わないが非常に大きい短編集。
各ページが余白で囲まれている分、
字が小さいので読みづらいのも残念。


面白く引き込まれるものもあったが、
まったく刺激を感じないものもあり、
1冊買って読むにはコストパフォーマンスが悪かった。

変な家

購入を検討している中古物件の間取りに
妙な空間を見つけたという相談から始まるホラー。


一戸建ての間取り図から推理を巡らせ、
いろいろな情報を明らかにしていく流れが新鮮。
家の造りを上から見た平面図なのに
そこから立体的な構造を想像していくのも面白い。


小説らしい情景描写がほとんどなく
筆者のモノローグと会話文が中心なので、
サクサクとテンポよく読み進められる。


ただ、後半になると家そのものから家系の話題に移ってしまい、
あまりにややこしい人間関係が会話だけで展開されるため、
筋書きの面白さより理解の面倒くささが上回ってしまった。


あまり風呂敷を広げ過ぎず、
もう少し現実味のある範囲でまとめて欲しかった。


【関連作品のレビュー】
変な家(映画)
本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂<1巻>

いろいろな悩みを解決してくれる不思議な駄菓子の話。


一話完結型の短いエピソードが収録されており、
ふと迷い込んだ駄菓子屋で手に入れたお菓子が
いろいろなトラブルを巻き起こしていく。


すべての漢字にふりがなが振られた子供向けの本だが、
ジョークの利いた展開は大人でも十分楽しめる仕上がり。
テンポがよく、誰にでもサクサクと読めるショートショートの良作。


【関連作品のレビュー】
ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(テレビアニメ)
ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(実写映画)

三体(さんたい)

三体

三体

Amazon

何人もの物理学者が自殺する奇妙な事件と、
不思議な世界を体験できるVRゲームを題材にした話。


前置きがかなり長く、登場人物や時代を変えて展開しつつも
全体の物語の方向性が見えないので序盤はかなり疲れる。
また、登場人物の大半が中国の人名なので
非常に把握しづらく、性別の判断すらしにくいのも難点。


重力を持った3つの物体が互いに影響しあって
予測不可能な複雑な軌道を描く「三体問題」を題材にしているが、
頭でイメージしにくい情景描写がいつまでも続く印象で、
とにかくテンポが悪くて読みづらく、
中盤を超えても惹きつけられるほどの魅力が感じられなかった。


SFの世界観やゲームに関する用語があまり説明なく出てくるので
そのあたりを知って方がスムーズに理解できるが、
同じく宇宙規模のSF作品である「星を継ぐもの」や
インターステラー」で感じた没入感には遠く及ばなかった。

おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密

経済や社会の動きを
中学生を主人公とした小説形式で解説したもの。


若い世代にもわかるように
お金の説明をするというコンセプトは大賛成だが、
せっかく小説形式で書かれているのに
登場人物に妙なアダ名が付いていて区別しづらくなっていたり
キャラクターの言動に魅力がないのは残念。


経済や金融に焦点を当てた本かと思いきや、
職業や政治などにも話が広がり、もったいぶった展開ばかりで
なかなか話が進展しないのもマイナス。
「かせぐ」「もらう」「ぬすむ」などの
独自の表現に置き換えた解説もわかりにくいように思う。


本来は中立であるはずの先生が
妙に職業差別や意地悪を感じる発言をするので
どうにもスムーズに受け取ることができなかった。


実用書としては期待したほどの知識が得られる内容ではないし、
小説としても引き付けられる魅力がなく、中途半端な1冊。

なぜ、あの人の周りに人が集まるのか?

売り上げが激減しているコンビニに
アルバイトとして入った中年女性が、
店の雰囲気を大きく変えていく話。


ビジネス書でありながらほとんどが小説で埋められており、
コンビニを舞台にしたストーリーを読みながら
周囲の人望を集めていくポイントを拾っていく必要がある。


コンビニのような小売業だけでなく、
いろいろな場面での求心力に置き換えられそうだが、
反面、効率の部分では大きく逆効果になる要素もあり、
本書のようにビジネス的なプラスが出るまで
そのやり方が継続できるかどうかは疑問。


引きの強いタイトルだけに期待したが
小説を読まないと要点がつかめないのはやや面倒で、
もっと効率よく吸収できる密度の高い構成にして欲しかった。

あるフィルムの背景 ミステリ短篇傑作選

13作品が収録された短編集。


収録作品
第1部
 ●惨事
 ●蝮の家
 ●孤独なカラス
 ●老後
 ●私に触らないで
 ●みにくいアヒル
 ●女の檻
 ●あるフィルムの背景
第2部
 ●絶対反対
 ●うまい話
 ●雪山讃歌
 ●葬式紳士
 ●温情判事


絶賛されている書評を目にするが、
全体的に評判ほど面白く思えなかった。


第1部に関しては長く引っ張る展開の割にオチが弱いし、
スッキリさせてくれるわけでもなくてストレスがたまる。


キャラクターは深く描かれているが
ひたすら不幸に見舞われた筋書きが続き、
後味の悪いままプツリと終わってしまう印象。


第2部はそれぞれの作品が短くなるので
テンポがよくなる分、ずいぶんマシに感じるが、
ショートショート程度のオチしか用意されていないのに
結末に持ち込むまでの前フリが長すぎるように思う。


どの作品も、ひとつしかない伏線を
いろいろな情報に紛れさせているに過ぎず、
これなら阿刀田高や星新一の方が高い満足度が得られる。

忌録(きろく):document X

4つのホラー作品を集めた短編集。


収録作品
 ●みさき
 ●光子菩薩
 ●忌避(仮)
 ●綾のーと。


どの作品も事件について出所の異なる資料を
断片的に掲載している体裁をとっており、
それがリアリティと不気味さにつながっていて面白い。
文章だけでなく写真やデータなども雰囲気が十分で
実際にあった事件なのでは、と思わせてくれる。


まったく意味のわからないものもあれば
現場の状況を詳細に記録した内容もあり、
読み進めるにつれて少しずつ全貌が見えてくるのが怖い。


リアリティを重視するためか
残念ながら最後まで読んでも完全な真相は得られず、
もやもやとした落ち着かない状況で物語はぶつ切りになる。


読みにくいのに非常に惹きつける文章で
途中で中断できない不思議な没入感がある。
ホラー作品が好きな人はぜひ一度読んでみて欲しい。

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